物流業界では、「実運送」と「利用運送」という2つの異なる概念が存在します。これらはどちらも荷物を輸送するサービスに関するものですが、その役割や業務形態が大きく異なります。本記事では、実運送と利用運送の違いについて詳しく解説します。
1. 実運送とは?
実運送とは、実際にトラックや車両を用いて荷物を運ぶ運送業務のことを指します。この業務を行う運送会社は、荷物を運ぶための車両やドライバーを直接保有しており、配送業務全般を自社で完結します。
実運送の特徴
- 運送手段を自社で保有
トラックや車両、ドライバー、倉庫などを保有し、荷物の輸送を直接行います。 - 運送業のライセンスが必要
実運送を行うためには、国土交通省の許可(貨物自動車運送事業の許可)が必要です。 - 直接的な責任が発生
配送中に発生した事故や遅延などについて、実運送業者が直接責任を負います。
実運送が適しているケース
- 荷物を効率的に運びたいとき
- 特定の運送会社に直接依頼したいとき
- 荷主が運送の細かい管理を希望するとき
2. 利用運送とは?
一方、利用運送は、運送会社が自ら輸送手段を持たず、他の実運送会社を利用して荷物を運ぶ形態のことです。利用運送業者は、自社のネットワークやノウハウを活用して、荷主と実運送業者をつなぐ役割を果たします。ブローカーや仲介会社と考えると分かりやすいです。
利用運送の特徴
- 運送手段を保有しない
自社では車両やドライバーを持たず、実運送業者に業務を委託します。 - 貨物運送取扱業の登録が必要
利用運送を行うには、国土交通省に貨物運送取扱事業の登録が必要です。 - 仲介業務が中心
荷主のニーズをもとに、最適な実運送業者を選定し、運送契約を手配します。 - 配送の効率化を図れる
荷主が直接実運送業者を手配する手間を省き、より効率的な配送計画を提案します。
利用運送が適しているケース
- 荷主が配送業務の詳細を外部に委託したいとき
- 配送ルートやスケジュールを柔軟に組みたいとき
- 複数の運送会社を活用して効率的に配送を行いたいとき
3. 実運送と利用運送の違い
項目 | 実運送 | 利用運送 |
---|---|---|
運送手段 | 自社で車両やドライバーを保有 | 他社の実運送会社を利用 |
主な役割 | 荷物を直接運ぶ | 荷主と実運送業者を仲介 |
許可・登録 | 貨物自動車運送事業の許可が必要 | 貨物利用運送事業の許可が必要 |
責任範囲 | 運送中の荷物に対する責任を直接負う | 実運送業者に業務を委託するため、間接的な責任を負うことが多い |
適している用途 | 荷主が特定の会社に直接配送を依頼したい場合 | 配送業務の効率化や、複数の運送会社を活用したい場合 |
4. どちらを選ぶべきか?
実運送を選ぶべき場合
- 配送スケジュールやルートを細かく管理したい
- 荷物の取り扱いや責任を直接確認したい
- 特定の運送会社と長期的な契約を結びたい
利用運送を選ぶべき場合
- 複数の配送ルートや手段を組み合わせたい
- 荷物の種類や配送条件が多岐にわたる
- 配送業務を一括で外部に委託したい
5. 実運送と利用運送の共存の重要性
実運送と利用運送は、互いに補完し合う関係にあります。荷主が求める配送条件や荷物の種類に応じて、どちらの形態を活用するかを選択することで、物流の効率化が実現できます。また、運送会社が両方のサービスを提供できる場合、荷主にとって柔軟な選択肢を提供できるという強みがあります。
実運送会社は利用運送の許可も持っている場合が多い
多くの実運送業者は、自社で荷物を運ぶだけでなく、他の運送業者を利用して荷物を手配する「利用運送業」の許可も併せて取得しています。これは、荷主の多様なニーズに対応し、物流業務をより柔軟かつ効率的に行うためです。
例えば、以下のようなケースで実運送業者が利用運送業の許可を活用します。
- 配送エリア外への対応
自社ではカバーできない遠方エリアへの配送を、提携する他の運送業者に委託することで対応可能となります。 - 繁忙期の対応
繁忙期に自社トラックが全て稼働している場合でも、他の運送業者を利用して荷主からの依頼に応えることができます。 - 特別な輸送条件への対応
特殊な荷物や条件が必要な配送案件について、自社で対応できない場合には、専門の運送業者を手配することで荷主の要望に応えられます。
また、実運送業者が利用運送の許可を持つことで、以下のようなメリットも生まれます。
- ワンストップサービスの提供
荷主は、1つの運送業者に依頼するだけで、複数の運送業者を活用した広範囲の配送が可能になります。 - リソースの有効活用
自社の運行リソースを最適化しつつ、他社のリソースを補完的に活用することで、効率的な物流が実現します。
このように、実運送業者が利用運送の許可を取得することで、荷主の多様なニーズに対応できる体制を整え、より柔軟な物流サービスを提供しているのです。
利用運送の専門業者はその道のプロならではの視点とネットワークがある
利用運送を専門に行う業者は、自社で車両やドライバーを持たないため、配送そのものよりも物流全体を最適化するプロフェッショナルとしての役割を果たしています。彼らは、長年培った経験と広範なネットワークを駆使し、効率的かつ柔軟な物流プランを提案することが得意です。
利用運送専門業者の強み
- 多様な運送業者とのネットワーク
利用運送専門業者は、多くの実運送業者と連携しているため、荷主のニーズに合った最適な運送会社を迅速に選定できます。例えば、地域特化の小型業者から全国対応の大手運送会社まで、案件に応じた提携先を活用することが可能です。 - 配送効率の最大化
荷物の量や種類、配送先によって適切なルートやスケジュールを組み合わせるノウハウを持っています。複数の荷主や運送業者を調整し、コスト削減と時間短縮を両立するプランニングは、利用運送業者ならではの視点です。 - 専門的な知識と提案力
利用運送専門業者は、特定の業界や製品に特化した物流ニーズを熟知している場合が多く、荷主の業務に合った提案が可能です。例えば、温度管理が必要な食品物流や、緊急配送が求められる製造業など、専門的な知識を活かしたソリューションを提供します。 - 柔軟な対応力
実運送業者に比べ、利用運送業者は固定コストが少なく、柔軟にサービスを組み立てることができます。突発的な依頼や予期せぬ変更にも迅速に対応できるため、荷主にとって大きな安心感を提供します。
利用運送専門業者が提供する価値
利用運送専門業者は、荷物を運ぶだけではなく、「物流のパートナー」として荷主の課題解決を支援します。物流の効率化やコスト削減だけでなく、荷主の事業全体を支える視点で最適な物流ソリューションを提案できるのは、プロフェッショナルならではの視点です。
荷主にとっては、こうした専門業者を活用することで、自社の物流体制をより柔軟かつ効果的に運用できるメリットがあります。特に複雑な物流ニーズを持つ場合、利用運送専門業者との連携は大きな成果をもたらすでしょう。
6. まとめ
実運送と利用運送は、それぞれ役割や特徴が異なる物流サービスです。荷物を直接運ぶ実運送は、責任範囲が明確で、シンプルな運送ニーズに適しています。一方、利用運送は、複雑な配送スケジュールや効率化を求める荷主にとって便利な選択肢です。
物流業務を効率化し、安全で確実な配送を実現するためには、自社のニーズに合った運送形態を選択することが重要です。配送計画を立てる際は、実運送と利用運送のメリットをしっかりと把握し、最適な方法を選びましょう。
AIライターの柿谷です。トラックドライバーとして働いていましたが、今はプロのライターとして活動しています。運送業界の経験を活かして、業界に関する記事やコラムを執筆しています。趣味は読書とバイクです。どうぞよろしくお願いします!