この記事は、2023年4月に書かれたものです。
運送業界では、「2024年問題」を目前に控え、様々な動きが活発になりつつあります。ニュースでも、物流2024年問題についての話題が増えているので、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
さて、運送会社といっても、抱えている仕事によってその業態や業績・規模感は多種多様です。
- コロナ渦で需要が増えて利益を増やした運送会社
- コロナ渦で需要が減り疲弊した運送会社
- 後継者不在で廃業を決意した運送会社
- 業績好調で他の運送会社を吸収合併した運送会社
など、おかれている状況はそれぞれの運送会社によって異なります。
しかしながら、運送・物流業界にとって、どの運送会社も避けては通れない問題として、2024年問題
と呼ばれる問題があり、運送会社各社は今、この問題に直面しています。
そして私自身も、運送会社を営む上で2024年問題を目前に控えて、この業界が確実に動き始めているなと日々実感していますので、現状と今後の動向についてまとめました。
と言うのも、最近、配送関係で困っている企業担当者の方から相談を受けることがとても多くなっているからです。主にそのような、運送会社を利用する荷主企業の担当者様に読んでいただけたらと思います。
2024年問題とは
運送・物流業界では、2024年4月1日以降から労働時間に上限が設定される働き方改革関連法が施行されます。このことを「2024年問題」と呼び、運送会社はもちろん、運送会社を利用する荷主企業にとっても、重大な影響があると言われています。
2024年問題が、運送会社に与える影響
2024年問題により、労働時間の上限が設定されると、運送会社には以下のような問題が起こりえると言われています。
- 運送会社の売上や利益の減少
- 労働時間削減によるドライバーの収入の減少
- 違法労働による罰則や罰金を受ける
もちろん、何も対策をしなければ、上記の影響を受けることになる運送会社が多いでしょう。
2024年問題が、荷主へ与える影響
2024年問題は、運送会社の問題と捉えられがちですが、実際には運送会社も生き残るための対策を取っていきますので、運送会社を利用している荷主企業にとっても下記のような影響が少なからず出てきます。
- 運賃コストの上昇
- 配送コースの見直し
- 車両やドライバーの確保がいっそう難しくなる
特に影響を請けやすい荷主は、今まで運送会社を軽く見て、「今の運送会社が駄目なら他の運送会社に頼めば良い。」と考えている荷主です。
今後は今までのように代わりの運送会社がすぐに見つからなくなります。特に、ハードな仕事の場合は、コストや業務内容自体を見直さないと代わりとなる運送会社が確保できなくなることが予想されます。
特に、拘束時間の長いルート配送では、拘束時間の削減は避けて通れません。
2024年問題を目前に控え、運送業界で動き始めていること
運送会社の多くは2024年問題に適応するべく、すでに準備を始めています。時間外労働時間が制限されることから、ドライバーの長時間労働に頼って売り上げを稼ぐという構造の運送会社は、そのままでは生き残れなくなります。
弊社においても、長時間労働を是正しつつ給与改定をおこない、ドライバーの仕事内容を評価して良いドライバーの流出を防ぎながら2024年問題対応に取り組んでいます。
また、弊社では具体的に下記のような動きを実行していたり、実感しています。
既存顧客への値上げや拘束時間削減のお願い
既存顧客に対して、値上げや拘束時間削減のお願いを実施しました。お客様の不利益になることもあり心苦しいかったのですが、今後とも継続して取引していただくためには避けては通れないことでしたので、丁寧に説明しご理解いただきました。
小規模運送会社の廃業や統合、M&A
こちらは実感ですが、一昨年あたりから知り合いの運送会社の廃業や統合の話をよく聞くようになりました。中にはM&Aで売却を検討していたけれど、買い手が付かず廃業した運送会社もありました。
新規の案件、特に定期ルート配送案件の相談が増えている
こちらは、2023年に入ってから特に顕著に感じています。先の「小規模運送会社の廃業や統合」により、今まで頼んでいた運送会社がなくなっていたというケースが少なくありません。臨時の依頼だけでなく、定期ルート配送の相談も多いです。
お問い合わせ内容としては、「需要が増えてきて配送を依頼しようとしたが、コロナ前に頼んでいた運送会社が、もうやめちゃって困っている。」という言葉をよく聞きます。また、今まで頼んでいたところがドライバー不足で対応出来なかったり、「前にやっていたのと同じ内容なのに仕事を断られた。」という声も聞きます。他にも「自社でトラックを保有しドライバーを雇用していたが高齢で退職することとなり、あらたにドライバーの募集をかけたが人が集まらない。」という声もよく耳にします。
ただ依頼内容をよく聞いてみると、すべてが弊社でできる案件という訳ではありません。金額は良いけれど拘束時間が長すぎて2024年問題に適応できないため請けられないという案件もよくあります。
今、運送会社が請けづらい案件
コロナや2024年問題以前だったら、荷主に怒られそうな内容ですが、実際問題、現在の運送会社が請けづらくなっている案件は以下の通りです。
- 拘束時間が長い案件
- 金額の安い案件
- 付帯作業の負荷が重い案件
- 移動距離が長い案件
2024年問題により労働時間の削減が求められるため、拘束時間が長すぎる案件はNGとなります。その他、ドライバー不足によりドライバーの待遇改善が求められており、金額のあまりにも安い案件もNGです。付帯作業については、内容にもよりますが、多くのドライバーがやりたがらない負荷の重い案件は基本的にNGです。ドライバーの流出を避ける為、なるべくやりたくないのが本音です。また、移動距離が長い案件は移動に時間がかかるため、労働時間的にNGになります。
供給過多の以前でしたら、それでも安くやる運送会社が見つかりましたが、需要と供給のバランスが崩れ、需要の方が多くなりつつあります。簡単に言えば、運送会社が見つかりづらいのです。
現在の運送会社は、時流適応に必ずコストが掛かっています。現状でも安く請け負っている運送会社があるとすれば、2024年問題への対策が出来ていなかったり時流に遅れている可能性があります。
その場合、突然運送会社が廃業するなどのリスクも考えられます。
こんな荷主は危ない
2024年問題は、運送会社の働き方改革です。
働き方改革において、以前の常識が今の非常識
となります。小規模な運送会社の廃業やドライバー不足によって需要と供給のバランスが崩れ、供給過多の状態から、需要過多の傾向へと移り替わりつつあります。ですが、依然として古い考え方の荷主企業が少なくありません。そこまで極端な荷主ばかりではないかと思いますが、以前の常識にとらわれていると危険です。
運送会社は代わりがいくらでもあると思っている
主に下記のことを理由として、運送会社の配車できるトラックの供給力は低下しています。
- 小規模運送会社の廃業増加
- 宅配需要の増加
- 慢性的なドライバー不足(免許制度改定や配送業の不人気)
- 運送会社の新規許認可数の低下
ですから、「運送会社なんていくらでも代わりがある」と思っていると危険です。特に、安くても無理に受注していた運送会社は次の理由で減っています。
- 安く受けていて売り上げが少なく、ゼロゼロ融資が終わるのを見据え廃業・倒産件数が増加した。
- 生き残った運送会社はコンプラを守る時流に対応する費用が必要となり、安く受けられなくなった。
- 新規許認可数が減り、少し無理をしても仕事を増やしたい新規参入業者が減ってしまった。
運送会社の供給力低下傾向は、しばらく続くと考えられます。
運送会社に過度に負荷を与えていることに気づいていない
最近あった実話から。
臨時の仕事としてピンチヒッター的に入った案件で、弊社のドライバーが初めて伺った際に、ミスをしないようにと現場担当者に質問をすると、「運送会社の癖にそんなことも分からないのか!」とドライバーに一喝。ドライバーはあまりの理不尽さに辟易してしまいました。弊社としても酷すぎるということで、発注担当者に報告すると、「現場のことなので、そんなことがあるとは知らなかった。すぐに改善する。」と回答いただきましたが、後から聞いた話では、その案件では、運送会社が代わる代わる来ていて、来たドライバーが次々にやめてしまうということでした。
この件では、確信犯的にやっているような気もしますが、荷主側でなぜ運送会社が続かないかの原因を理解し対策をとらない限り、いずれ破綻してしまうように感じました。
運送会社の評価をしていない
この項目は、意外とやっていない荷主企業が多いのではないでしょうか。
現在委託している運送会社について、値上げリスク、廃業リスク、など荷主企業にとってリスクになることがどれくらいあるかを評価して下さい。
値上げはこのご時世ですから、ある程度仕方のない事として考慮しておいた方が良いかと思われます。どの程度なら許容できるかを事前に考えておいた方が良いでしょう。
廃業リスクについて、後継者のいない運送会社が廃業したり、無理をし過ぎた運送会社が法令違反や債務超過で倒産するリスクが考えられます。実際に、新規の定期案件では、「今まで使っていた運送会社が廃業してしまった。」という相談が多いです。
運送会社の代替策を考えていない
もしも、今利用している運送会社が突然廃業してしまったら、どうしますか?今までと同じ内容の仕事なのに断られてしまったらどうしますか?運送会社に断られる原因にもよりますが、いくつかの運送会社を利用してリスクを分散することをお勧めします。どの運送会社にも断られるような場合には、荷主側で配送コースや拘束時間を見直すなど抜本的に対策が必要だと考えられます。
今すぐ実施!物流不全を起こさない為に荷主がやるべき事
物流予算の確保
主に運送会社からの値上げ要請に対応するために予め物流費の予算を確保してください。物流がストップしてしまうと荷主企業にとって甚大な被害が発生してしまいます。
荷主側で自社物流に切り替える方法もあります。その場合、人材確保に掛かるコスト、車両購入・維持のコストが以前よりも増えていることに気を付けてください。
自社物流にしても、運送会社に委託するにしても、以前より物流に掛かるコストが上昇しています。いざと言うときに対応するため、物流の予算を確保してください。物流費確保のための商品の値上げも必要かもしれません。
過度なサービスの廃止または有料化
例えば、1つでも荷物があれば配送するサービスや、当日配送サービスの有料化や廃止を検討すべきと考えます。場合によっては受注受付の締め切り時間を早める必要があるかもしれません。なぜかというと、このような荷主が顧客に行っているサービスの負荷を、実質的に運送会社が負担していることが多いからです。内製化して、荷主側で配送する方法もありますが、顧客に対して本当に必要なサービスであるならば、有料化を検討すべきです。顧客にとって実はそこまで重要なサービスではないのであればそのサービスは廃止しましょう。
配送コースの見直し
ルート配送においては、拘束時間が長いコースは見直しをする必要があります。運送会社はこれから拘束時間の管理が厳格化されます。拘束時間が長いコースについては、運送会社から拘束時間 削減の打診が来るはずです。法改正の影響ですので、以前のように運送会社を変えれば良いという発想でいては、新たに請ける運送会社は見つからないと思われます。
既存の運送会社とのパートナーシップ強化
すでに運送会社との取引がある場合は、荷主側から2024年問題に対して話し合いの場を設けるなどすると良いでしょう。場合によっては、運送会社から値上げや拘束時間についての話が出てくるかもしれませんが、運送会社が直面している問題を荷主側でも把握して、物流不全を起こす前に対策を考えておく必要があります。運送会社ならではの視点で、解決策が見つかる場合も考えられます。
代替配送手段の確保
2024年問題の対策で、既存の運送会社と折り合いが付かない場合、まずは他の運送会社を探すことになるかと思います。しかし、以前と比べてすぐには運送会社は見つからないかと思われます。ですので事前に代わりとなる運送会社を選定し相談しておくことがベストです。見積もりを複数とって準備しておくと良いかもしれません。
配送について内製化を図って、自社でドライバーを募集する方法も考えられます。しかし、現在はドライバーの成り手が少なく運送会社もドライバーの確保に苦労しています。魅力的な仕事内容でなければ人材を確保することが難しい上、トラックの価格も昨今で急激に上がっていますので、以前と比べられないほど意外とコストがかかると思われます。
まとめ
- 運送会社は働き方改革である『2024年問題』を目前に着実に変わりつつある。
- 2024年問題の影響は荷主企業へも波及する。
- 困っている荷主からの相談がとても増えている。
- 相談内容を聞いていると、荷主の意識改革が必要な場合もある。
- 荷主企業担当者様は物流不全を起こす前に事前準備を!
以上、「2024年問題目前、運送会社を利用する荷主企業担当者が意識すべきこと」でした。
東京の運送会社シゲタイーエックスでは、昭和63年に軽貨物1台で創業して以来、臨時・緊急のスポット運送をメインに日々お客様の大切な荷物を配達しております。
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